2008年11月5日(水)

   ◆アメリカをやめる◆
 アメリカ大統領選まであと数日。一国家の首長選挙とはいえ、世界中にこれほどのダメージを与えてきたのだから、アメリカ国民じゃないけれど投票させろ、と言いたい人は各地にたくさんいることだろう。
 逆に、私のアメリカ人の友人Aのように、その権利を放棄する者もいる。アナーキストを公言するAは、アメリカ北中部の大学で教鞭を取っていた。しかし、言葉では常にリベラルな意見を述べるのに、実際の態度では身近な貧困や差別に目をつむる優雅な知識人たちに、嫌悪を募らせていく。だから彼女の目から見れば、マケイン候補はむろん、そのような知識人たちに支持されているオバマ候補もうさんくさい人間となる。そして今年の夏、カナダに新たな職を得て移住してしまった。「アメリカをやめることにした」と宣言して。
 この、「アメリカをやめる」という言い回しは、アフリカ系アメリカ人のランドール・ロビンソンという人権活動家が、その著作のタイトル(Quitting America)として使った言葉だという。彼もアメリカから、カリブの小国へ移住したのだ。
 無政府主義者であるAの「アメリカをやめる」宣言は、民主党か共和党かという選択ではなく、両者の共犯の歴史を根本から批判するものだ。これ以上アメリカの犯す罪に荷担しない、という意思表示でもある。
 私もそのような気持ちで、日本をやめたい。けれど、無政府主義者でも有政府主義者でもない私は、「まずは政権を選ばせてくれ」と独り言をつぶやくのがせいぜいである。
(東京新聞 2008年10月31日付夕刊1面「放射線」より、一部改稿)


 アメリカ大統領選はオバマ候補が当選した。共和党政権が続くよりはマシな結果だとは思う。演説がうまいから、当選のスピーチもなかなか感動的だった。でも、どこまで根本的に変えようというのかは、まだわからない。私の意向などどうでもよいのだけど、私はこの人をまだ信用していない。
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by hoshinotjp | 2008-11-05 23:37 | 政治