2008年 11月 13日
2008年11月13日(木) |
「あ、先輩。奇遇ですね。こんなところで何してるんですか?」
「俺はアキバ、大好きなんだよ。漫画も詳しいしな。で、おまえはどうした? 景気の悪い顔してよ。モテないぞ」
「景気、悪いんですよ。だから仕事ないんです」
「あ、そうか。じゃあ飲み行くか」
「先輩はどうせ高いバーとかでしょ。そんな気分じゃないすよ」
「北の家族、なんてどうだ? ほっけの煮付けなんか、うまいぞう」
「ほっけは煮付けにはしませんよ」
「あ、そうか。俺は九州の出だからな」
……
「な、案外、うまいだろう?」
「俺にはいつもの味ですけどね」
「しかし、おまえの同期みんな、そんな困ってるのか。こりゃ、みぞうゆうの不景気だな」
「先輩、それ、みぞう、じゃないすか?」
「あ、そうか」
「先輩って、いくら揚げ足取っても怒らないですよね。人間できてるなあ」
「俺は前向きな人間だからな。よし、一肌脱いでやるか。……とりあえず、この金を……」
「すごい、札束じゃないですか!」
「みんなで分けろよ。おまえの代は何人だ? 80人だっけ? だとすると……一人頭12500円ってところか」
「太っ腹だなあ。さすが先輩、普段からこんな現金持ち歩いてるんだ」
「この現金はOB会費だけどよ、あとで俺が、気の毒な後輩たちへのカンパに使ったって言って寄付集めするから、気にしないでどーんと使ってくれ」
「そらあ、まずいんじゃないすか?」
「いいんだって。困ってるやつにはできるだけ早く金が渡ったほうがいいんだよ」
「困ってるやつって、俺とか、さっき言った4人とかは、確かに仕事あぶれてますよ。同期にも他にもいるとは思うけど、80人全員があぶれてるわけじゃないすからね。吉田なんか、親の遺産だけで一生働かないでいいなんてうそぶいて、家事手伝してますからね。困ってないのに、あいつにも分けてやるんですか?」
「あ、そうか、それも何だなあ」
「高給取りのやつもいますし、全員で分けたら、『困っている奴にカンパ』じゃなくなっちゃいますよ」
「じゃあ失業してるやつだけに限る、ってことにしよう」
「それじゃあ吉田も入っちゃいますよ。さっきも言ったけど、小林なんか、失業してないけど、ある意味、俺たちよりひどいですからね。あの薄給で、子ども三人抱えて、親の入院費も出して、しかも単身赴任ですよ」
「わかった。困ってないやつには自主的に遠慮してもらうってことでどうだ? 妙案だろ?」
「先輩は前向きな性格だから、そんなのんきなこと信じられるんでしょうね。ただで金くれるっていうのに、誰も自主的になんか、断りませんよ」
「おまえさ、人生、のんきさも必要だよ。カリカリしてるから苦しくなるんだろ」
「仕事がなくて金がないからですよ!」
「ほら、カリカリしてる。おおらかに構えろよ。そうすりゃあ、運も開けてくるって。よし、俺がそのきっかけを作ってやる。おまえにこの100万円を渡すから、自由に配ってくれ。誰に配るかは、おまえの裁量に任せる」
「えー、冗談じゃないですよ。配らなかったやつから文句言われるの、俺ってことになるじゃないですか。それ以前にこの金、OB会費でしょ? みんなの同意も得ないで、役員でも何でもない俺が勝手に分けちゃうなんて、ヤバいすよ。先輩が決めたんだから、先輩がどうにかしてくださいよ」
「おまえ、今は分権の時代だよ? 一人一人に権限を渡して、それぞれが自力でどうにかするって流れだよ。それが自立ってもんだ。俺も応援はするけど、決めてください、なんて、そこまで甘えちゃあいけないな」
「それ、おかしくないですか? 権限渡すっていうんなら、俺にまず役職くださいよ。それで、俺がお金集める権限までセットでくださいよ。そのうえで使い道も任せる、っていうんならわかるけど、先輩が決められないから俺に任せるって、ただパシリに身代わりになれって言ってるみたいなもんじゃないですか。何が自立だ、お気楽にもほどがある」
「カリカリすんなって。どうも誤解があるようだから、これからもちょくちょく、はんざつに会おう。じゃあ、任せたからな」
「はんざつ、じゃなくて、ひんぱん、ですよ」
「あ、そうか」
「俺はアキバ、大好きなんだよ。漫画も詳しいしな。で、おまえはどうした? 景気の悪い顔してよ。モテないぞ」
「景気、悪いんですよ。だから仕事ないんです」
「あ、そうか。じゃあ飲み行くか」
「先輩はどうせ高いバーとかでしょ。そんな気分じゃないすよ」
「北の家族、なんてどうだ? ほっけの煮付けなんか、うまいぞう」
「ほっけは煮付けにはしませんよ」
「あ、そうか。俺は九州の出だからな」
……
「な、案外、うまいだろう?」
「俺にはいつもの味ですけどね」
「しかし、おまえの同期みんな、そんな困ってるのか。こりゃ、みぞうゆうの不景気だな」
「先輩、それ、みぞう、じゃないすか?」
「あ、そうか」
「先輩って、いくら揚げ足取っても怒らないですよね。人間できてるなあ」
「俺は前向きな人間だからな。よし、一肌脱いでやるか。……とりあえず、この金を……」
「すごい、札束じゃないですか!」
「みんなで分けろよ。おまえの代は何人だ? 80人だっけ? だとすると……一人頭12500円ってところか」
「太っ腹だなあ。さすが先輩、普段からこんな現金持ち歩いてるんだ」
「この現金はOB会費だけどよ、あとで俺が、気の毒な後輩たちへのカンパに使ったって言って寄付集めするから、気にしないでどーんと使ってくれ」
「そらあ、まずいんじゃないすか?」
「いいんだって。困ってるやつにはできるだけ早く金が渡ったほうがいいんだよ」
「困ってるやつって、俺とか、さっき言った4人とかは、確かに仕事あぶれてますよ。同期にも他にもいるとは思うけど、80人全員があぶれてるわけじゃないすからね。吉田なんか、親の遺産だけで一生働かないでいいなんてうそぶいて、家事手伝してますからね。困ってないのに、あいつにも分けてやるんですか?」
「あ、そうか、それも何だなあ」
「高給取りのやつもいますし、全員で分けたら、『困っている奴にカンパ』じゃなくなっちゃいますよ」
「じゃあ失業してるやつだけに限る、ってことにしよう」
「それじゃあ吉田も入っちゃいますよ。さっきも言ったけど、小林なんか、失業してないけど、ある意味、俺たちよりひどいですからね。あの薄給で、子ども三人抱えて、親の入院費も出して、しかも単身赴任ですよ」
「わかった。困ってないやつには自主的に遠慮してもらうってことでどうだ? 妙案だろ?」
「先輩は前向きな性格だから、そんなのんきなこと信じられるんでしょうね。ただで金くれるっていうのに、誰も自主的になんか、断りませんよ」
「おまえさ、人生、のんきさも必要だよ。カリカリしてるから苦しくなるんだろ」
「仕事がなくて金がないからですよ!」
「ほら、カリカリしてる。おおらかに構えろよ。そうすりゃあ、運も開けてくるって。よし、俺がそのきっかけを作ってやる。おまえにこの100万円を渡すから、自由に配ってくれ。誰に配るかは、おまえの裁量に任せる」
「えー、冗談じゃないですよ。配らなかったやつから文句言われるの、俺ってことになるじゃないですか。それ以前にこの金、OB会費でしょ? みんなの同意も得ないで、役員でも何でもない俺が勝手に分けちゃうなんて、ヤバいすよ。先輩が決めたんだから、先輩がどうにかしてくださいよ」
「おまえ、今は分権の時代だよ? 一人一人に権限を渡して、それぞれが自力でどうにかするって流れだよ。それが自立ってもんだ。俺も応援はするけど、決めてください、なんて、そこまで甘えちゃあいけないな」
「それ、おかしくないですか? 権限渡すっていうんなら、俺にまず役職くださいよ。それで、俺がお金集める権限までセットでくださいよ。そのうえで使い道も任せる、っていうんならわかるけど、先輩が決められないから俺に任せるって、ただパシリに身代わりになれって言ってるみたいなもんじゃないですか。何が自立だ、お気楽にもほどがある」
「カリカリすんなって。どうも誤解があるようだから、これからもちょくちょく、はんざつに会おう。じゃあ、任せたからな」
「はんざつ、じゃなくて、ひんぱん、ですよ」
「あ、そうか」
by hoshinotjp
| 2008-11-13 16:03
| 政治