2008年12月27日(土)

   ◆死にたくなったら◆
 日本の自殺者は十年連続で三万人を超えているが、この経済危機のもと、年度末に向かって、自殺者がさらに急増するのではないかと危惧されている。
 予測できる事態なのに、黙って手をこまねいているわけにはいかない。そこで、「自殺実態白書」を作成するなど自殺対策に取り組んでいるNPO法人「ライフリンク」は、十二月一日より、「ライフリンクDB」(lifelink-db.org)なるサイトを立ち上げた。これは、経済的な苦境から精神的問題にいたるまで、さまざまなケースで追いつめられている人が、最後にどこへ救いの手を求めたらよいのか、支援機関を教えてくれるサイトだ。検索式になっていて、自分に当てはまる条件を入力すれば、最適な相談機関の情報がヒットする。
 私はライフリンク代表の清水康之さんとお話ししたことがあるのだが、二つの言葉が強く心に残っている。
 一つは、「生き心地のよい社会」。裏を返せば、今の社会は生き心地が悪い。ごく普通に生きることすら難しい。私はたちはじつは、とても異常な環境で暮らしているのである。まずはその異常さを認識しないと、いつまでも自殺は他人事だ。
 もう一つは「声なき声に耳を傾けたい」。自殺した人は本当は生きていたいのに、その訴えを聞いてくれる人が途絶え、死に追い込まれる。だから声を聞くことで、死は避けられるはずだ。それは同時に、この社会の何がどう異常なのかを聞くことにつながる。
 死への衝動を断ち切れるのは、身近な人の力なのだ。
(東京新聞 2008年12月5日付夕刊1面「放射線」)


追記
 年間の自殺者が3万人を越えたのは、1998年である。以降10年間、毎年3万人を越える自殺者が続いている。上記で紹介した「自殺実態白書」では、1998年に自殺者が急増した原因について、「1998 年3 月は決算期であることに加え、この時期は、金融当局の金融機関に対する自己資本比率検査が強化された時期であり、内部留保金を増加させなければならなかった多くの金融機関は、「貸し渋り」「貸し剥し」を行い、多くの中小零細企業の破綻の引き金となったと見られている」と分析している。
 この「98年3月ショック」の状況は、間違いなく今年度の3月決算期に、より大規模な形で繰り返されるはずである。だとすると、中高年男性を中心に、経済的に追いつめられて死を選択する人たちが急増するかもしれないことは、想像に難くない。
 望まない死を選択するさまに、私は耐えられない。その死のダメージは確実に周囲の者に及ぶ。命を最後の一滴まで生き尽くした私の叔父の、「もっと生きるということに真剣になれ!」と死の直前に放った言葉を、死を選択するよう追いつめている当事者たちに向けたい。
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by hoshinotjp | 2008-12-27 15:04 | 社会