2007年6月14日(木)

 介護サービスのゆがんだ実態よりも、そのトップである折口会長の素行ばかりが世の注目を浴びている感のある、コムスン事件。折口会長が率いている親会社グッドウィル・グループがなぜそんなにカネがあるかというと、人材派遣業で大儲けしてきたからである。やっていることは人身売買と言うに等しい行為なので、人身賃貸業と呼びたいほどだ。そんな呼び名がふさわしいと感じてしまうような非道な商売がなぜ成り立つのかといえば、それが法に反していないからだ。
 バブル経済崩壊後の廃墟から立ち直るため、経済界は徹底して人件費を抑えることを打ちだし、政治も歩調をそろえた。そのときに法に引っ掛からず責任を曖昧にする仕組みとして、仲介業者つまり人身を貸し出すブローカーが必要とされたのである。できるだけ安い労働力を提供してくれるブローカーは、経済界からも政界からも歓迎された。そうやって金と力を伸ばしてきたブローカーたちの一人が、グッドウィル・グループだ。だから経団連でも幹部を務め、厚生労働省からもコムスンは当初厚遇された。
 人を徹底して安く使うこのノウハウは、コムスンの介護業でも活かされ、その結果トラブルが続出して、介護の体をなさない事態に至ったわけだ。つまり、顧客以上に、社員からカネを吸い上げて儲けた会社ということになる。
 と、このようなことが、今の私なら、事件の背後から読みとることができる。だが、少し前の私だったらわからなかった。なぜかというと、「ワーキングプア」という問題がどういうことなのか、本当には理解していなかったからだ。少し前にこのブログにも書いたが、4月の統一地方選挙で、自分の教え子であるあおと功英氏がこの問題への怒りから杉並区議選挙に立候補したときに、初めて実感を持って「ワーキングプア」の現実を知ることになったのだ。
 以来、少しずつではあるが、この問題を知る努力をしている。
 先週も、「フリーターの「希望」は戦争か」という討論を聞きに言った。これは、「フリーターズフリー」という書籍(雑誌?)が創刊された、記念イベントだった。「フリーターズフリー 」は、ワーキングプアの当事者であるフリーターたちが、働くこと全般を根本から考えた論考を集めたものであると同時に、フリーターにこの書籍作りに関わってもらうことで雇用を作り出そうともする試みであるようだ。詳しくはサイトを見てほしい。
 この書籍を読み、イベントでの議論を聞き、その他いろいろな書物を読みながら、今痛切に感じていることは、私もこの問題を見てこなかった、というとても苦い意識だ。マイナーな存在を生み出すのは、「世間」からの無視である。その無視に私は荷担していた、と今思い知らされてショックを受けているわけである。だから、この問題を現実にどう変えていけるのかを考える一方で、なぜ自分はこの問題を素通りできたのか、ということをいつも自問することになる。バブル世代でありながらあの時代が本当に嫌で嫌で仕方なかったために、宮崎勤事件もオウム真理教の事件も酒鬼薔薇事件も自分の問題として実感を持って受けとめたのに、なぜバブル経済最大のツケを払わされているワーキングプアに対しては実感を持って考えることができなかったのか。答えはいくつも浮かぶが、まだ本当には突きつめきれていない。
[PR]
by hoshinotjp | 2007-06-14 22:01 | 社会