2008年5月8日(木)

 少し前、北京オリンピックの聖火リレーが各国で行われ、大勢の中国人留学生たちが集結し、「愛国」を掲げて「チベットは国内問題」と大合唱する異様な姿を見ながら、私が感じたのは、「愛国教育」の怖ろしさである。中国以外のどんな立場から見ても、チベットは植民地化されていると言ってよい。にもかかわらず、外部からのまっとうな批判に対して、漢民族の学生を中心とする若者たちが、まったくやましさを覚えずに自己正当するスローガンを叫び、外国の報道のほうが偏っていると断言し不買運動ができるのは、「国を愛する心」を教育を通じて叩き込まれた世代だからこそだろう。
 この光景は、強烈な愛国教育が実施されていた戦前の日本とそっくり重なる。朝鮮を併合し、満州を植民地としながら、諸外国から批判されると、日本の世論は「おかしいのは外国のほうだ」と沸騰した。国際連盟からの脱退をやってのけた松岡洋右は、英雄視された。自分たちは満州や朝鮮に利益をもたらしてやっている、と主張した。これは今、中国がチベットについて行っている主張とそっくりである。
 中国政府や漢民族の人たちのこういった態度に違和感を覚えるのであれば、日本で今、少しずつ広がっている「愛国教育」についてもよく考えたほうがいい。日本でもこのまま愛国教育が強化されていけば、こんな自己中心的で醜くおぞましい姿をさらすことになるだろう。そしてそれが自滅をもたらすことは、歴史を振り返ればよくわかることだ。
 むろん、日本でもそうだったように、中国にもこの風潮を批判的に捉えている人たちはたくさんいて、ちらりほらりと声は聞こえてくる。そのことを見失わないようにしたい。
 それにしても、この時期に何ごともないかのように胡錦涛主席と首脳会談をしている福田首相は、彼の持ち味の事なかれ主義、他人事主義の真価を最大限に発揮している。事なかれだから卓球もしないそうだ。首脳会談は拒むよりしたほうがいい。それでもっとなまなましく駆け引きをするべきなのだ。でも何もしているようには感じられない。それをしなければ国益が損なわれるわけでもないのに靖国を参拝して国交が滞るのもおかしいが、チベットでの弾圧事件が国交に何の差し障りももたらさないというのも、とてもおかしい。

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by hoshinotjp | 2008-05-08 22:49 | 政治