2008年8月8日(金)

   ◆味覚の洗脳◆
 小麦の高騰や食の安全意識の高まりにより、米の売れ行きがよいそうだ。わが家でも、毎朝パンを食べていたのを、白いご飯に変えた。すると、食習慣が微妙に変わった。
 まず、生野菜をあまり食べなくなった。パンに付け合わせていたサラダの代わりに、おひたしなどが増えたのだ。ハムやウィンナーや卵に、納豆と海苔が取って替わった。もともと好きだった味噌汁と緑茶は、消費量が倍になった。
 スーパーでは米だけでなく海苔の売れ行きも増えたというから、皆、同じような変更を考えているのだろう。
 そもそも、日本はなぜ、パン食を拡大させていったのだろうか。
 十六年前に中米のエルサルバドルを貧乏旅行したときのこと。当時は、アメリカの支援を受けた軍事政権と、民主派の反政府ゲリラとの間で繰り広げられた内戦が、終結したばかりだった。私は現地で知り合った大学の先生に、高級住宅街へ連れていってもらい、小洒落たレストランでパスタをごちそうになった。その小麦は、アメリカからの援助によるものだという。だが、中米はトウモロコシ文化圏である。小麦はアメリカ資本の巨大食品産業に渡り、パンやパスタやピザとなって高級住宅街で消費されるのだ。
 このとき私は、日本で第二次大戦後にパン食が拡大した仕組みを理解し、ショックを受けた。私たちは、味覚を洗脳されていたのだ。
 今、本当に必要とされているのは、洗脳を促す「食の自由化」ではなくて、「食の民主化」ではないだろうか。
(東京新聞 2008年8月1日付夕刊1面「放射線」より)

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by hoshinotjp | 2008-08-08 15:59 | 政治