2008年9月13日(土)

 格差社会を拡大させ続けるのか、何らかの手を打ってその傾向を変えるのか、今、世界の未来がどちらへ行こうとしているのか、その分岐点の一つが、ボリビアにある。ボリビアは今、未来への最前線の一つとなっている。
 エボ・モラーレス大統領は2年半前に就任して以来、天然ガス国有化や大土地所有制の廃止(農地改革)を進めているが、その利益を独占してきた既得権益層は当然のごとく抵抗、さまざまな「実力行使」で妨害してきた。この膠着状態を打開するため、エボ・モラーレス大統領は8月に国民投票を実施、6割以上の得票で信任を得たが、反大統領派は実力行使をエスカレートさせ、暴動を続発させている。
 そしてついに今週10日水曜日、エボ・モラーレス大統領は、暴動を背後で画策してきたとして、アメリカ大使に国外退去命令を発令した。
 ラテンアメリカとあまり縁のない多くの日本の人には、馬鹿げた話に思えるかもしれない。「反米左派」と形容されるエボ・モラーレスが突飛な行動に出たのだと、新聞記事を読めば思うかもしれない。
 だが私には、アメリカ政府は本当に暴動に関わっているのだと思える。実際に何十年にもわたって、CIAが中南米の国々で暴動を起こさせ、いくつもの内戦を仕掛けてきた歴史が繰り返されてきたのだ。それらは「汚い戦争」と呼ばれている。カネのためにアメリカが他国内で仕組んだ内戦だからだ。冷戦崩壊後は、アメリカはそれを中東で行おうとした。石油を意のままにするために。そして今度は、天然ガスをボリビア国民に渡してなるものかと、妨害工作をする。民主的に選ばれたはずの大統領の施策に、アメリカを味方につけた地方の有力者たちが従わず、ボリビアからの分離を画策し、暴動を起こす。アメリカは、自ら民主主義を壊している。ロシアがグルジアに対して取っている行動と変わりはしない。
 ラテンアメリカ諸国で、アメリカとは距離を置き、それまでアメリカ主導で進めてきた自由化路線を見直そうとする大統領が、ここ数年で続々と誕生している。それを先導してきたのは、ベネズエラのチャベス大統領だが、私はチャベスをどうしても好きにはなれない。その強権体質を信用できない。反米のためならプーチンと手を組むなんて、もってのほかである。しかし、強権を発動したりはしないエボ・モラーレスには、大いなる可能性を感じてきた。彼はこの2年、大変粘り強く民主的な手続きに則って、貧困を生む制度を根本から変えようと努めてきたと思う。だからこそ、その政策は実現しつつあるのだ。それは石油の収益を元手とした、ポピュリズム的な社会福祉を実施しているベネズエラとは、似て非なるように感じる。
 ボリビアの社会改革がアメリカ(と国内の既得権益層)につぶされるようなら、アメリカの陰にある日本でも、格差社会が根本的に解決されることは不可能だろう。投資家のためでしかない自由化社会は、形を変えて保持され続けるだろう。
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by hoshinotjp | 2008-09-13 22:45 | 政治