2007年 12月 09日 ( 1 )

 新作『無間道』の装幀の彫刻は、友人の若き彫刻家、土屋仁応(よしまさ)さんの作品、「子犬」。実物は両手のひらに収まるぐらいの大きさで、どこか本当に生きているような妖気が漂う。その無防備ないたいけのなさは、見る人の「庇護したい」という欲望をあからさまにさせる。「庇護したい」という欲望は、支配したい、という凶暴な気持ちをその奥に含んでおり、やがてそれは当人にも止めることのできない暴力へと発展する、かもしれない。そのような、官能的と言えるような無垢の魅惑と、すぐそばまで暴力が迫っている不気味さを、この作品はたたえている。それで、一見「無間道」のおぞましい世界とは無縁そうな、しかしこれ以外に考えられないほど「無間道」の世界を体現している「子犬」を、装幀に使わせていただいた。快諾してくださった土屋さんにはとても感謝しています。
「無間道」については、私としては思うぞんぶん書いた小説である。ここ数年は自分にさまざまな制限を課して作品を書いてきたが、それらを取り払い、自分の好き勝手に書いたというか、自分の考える文学へ向かって脇目もふらず突進し始めたというか。それは自分の楽しみのために書いた、ということではない。
 宗教なき現代、そしてそれゆえにスピリチュアルやら霊感やらへの依存が強まる今、小説とは祈りである、おまじないである、と私は思っている。
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by hoshinotjp | 2007-12-09 23:10 | 文学