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 明日の総選挙、あえて水を差すようなことを。
 政治が体をなさずに崩壊している現在、政権が民主党に交代することは、今よりずっとましな結果だとは思う(少なくとも「ましかもしれない」と思えるだけでも、ましだ)。私は民主党を支持はしないが、政権交代は望んでいる。その点では私も、ちまたの気分とほぼ同様の気分を抱いている。
 それでも、今の選挙のムードは、やはり異様だと思う。納豆やバナナが売り切れる現象や、WBCで過度に熱狂する現象や、特定の誰かをバッシングする風潮と、基本的に同一に感じる。支持する先が変わっただけで、小泉郵政選挙と体質がそう大きく変わってはいないと思う。
 選挙につきものであった「アナウンス効果」が消えたのはいつごろからだろうか? 小泉選挙、一昨年の参院選、そして明日の総選挙と、常に有権者の指向はファナティックに一方へ偏る傾向を見せている。小選挙区制の特色だ、という意見もあるが、小選挙区制が導入されてから10年近くはこのような極端な傾向は見られていない。これは選挙だけでなく、ここ何年かに顕著な、人々の社会意識なのだという気がする。自分も勝ち組にいたい、みんなと一体となってカタルシスを味わいたい、達成感を共有したい、そのことで自分にも力があることを感じたい、自分の一票に意味があることを実感したい、自分も意味ある存在であると感じたい、という欲求。さらには、むしろこちらのほうが強いのかもしれないが、そこからこぼれ落ちることの恐怖。自分が無意味で孤立した存在になることを避けたい気持ち。選挙とWBCは同一地平上で消費されうるものとなっているのだ。
 もちろん、投票行動において一人一人がまじめに考えていることは疑っていない。けれども、そのさらに底流で人々の気分を支配しているのは、そのような集団的な無意識なのではないか。
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by hoshinotjp | 2009-08-29 22:54 | 政治
 夏休み+仕事でちょっとお休みをしていました。南関東の私の家のまわりでも、今年はついにクマゼミの鳴き声を聞きました。ここまで北上してきたということです。

 横浜市と杉並区で、作る会の教科書が採択された。何だか惨めな気分になる。
 作る会が自称する「自由主義史観」は、「新自由主義的な歴史観」と言い換えてもよいと私は思う。その特徴は3点。
1.「新自由主義」、つまり米国の経済イデオロギーをベースにしている。それは、プロテスタントのキリスト教原理主義によって裏打ちされている。つまり、「普遍的な価値である民主主義と自由経済を世界に広める使命が我々にはある」という、他国への介入姿勢が正当化されている。
2.上記と重なるが、宗教原理主義的な価値観に基づいている。新自由主義下の米国が、自分たちの土地を「神の国」と位置づけているように、日本を神話的な国家と位置づける。
3.愛国教育を目的としている。自分たちの犯した過ちは認めず、とにかく己を優れた過ちのないものとして確立したがる。中国や北朝鮮の行ってきた愛国教育と、基本的には同系列にある。それがいかに現実の歴史とかけ離れているか、手に負えないエゴイストを作り上げるか、それらの国の態度を見ればはっきりわかるのに、自分たちも同じやり方をそっくり真似ようとは、何と愚かなと言うしかない。
 基本的には、新自由主義的な価値観に基づいているという意味で、きわめてアメリカ的な歴史である。終戦時にアメリカが日本にもたらした歴史観が古くなったので、現在のアメリカの望んでいる歴史観に変えましょうと、自ら「空気を読んで」作ったような歴史だ。
 太平洋戦争の開戦が正当化されている点についても、宗教原理主義的な面から説明できる。アメリカが自分たちの宗教原理主義的な使命感に基づいて他国へ介入するなら、介入された側も、アメリカ支配の打倒を訴えるのに、宗教原理主義的な「イスラム聖戦」に基づいて無差別テロを正当化する。日本の侵略や開戦を正当化するやり方も、欧米支配打倒のための「聖戦」という、宗教原理主義的な論理を踏襲している。
 このように、この歴史観には、自分たちの主体性がいちじるしく欠けている。ひと言で言えば、卑屈さに満ちている。「自虐史観」によって自分たちのアイデンティティが失われた、と批判していながら、自分たちも借り物をつぎはぎしてグロテスクなコピーのアイデンティティしか示せないという、非常に虚しい矛盾。強い者大きな者(アメリカ、中国)には相手と同じやり方を真似して対等になろうという、近代化以降ずっと踏んできた同じ轍。この、歴史に学ばない歴史を、子どもたちが教わるという事態を前に、惨めな気分以外のどんな気分を抱けようか。
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by hoshinotjp | 2009-08-18 08:33 | 政治
 岡村淳さんのエッセイを久しぶりにアップロードいたしました。「ブラジル学の巨人・中隅哲郎伝 中隅みつ子夫人に聞く」の(下)です。タイトルは「ブラジル学と寅さん」。(上)の「アマゾンが原因です」と会わせてお読みいただくと、巨人・中隅さんの等身大のお姿がうかがえるでしょう。
 最後の段落が胸に来ます。得てして、昔に偉業を達成したり、尊敬されるべき高潔な生き方を貫いた男性は、伴侶である女性から、「生まれ変わっても一緒に? うーん、ちょっと考えますね。でも、やっぱりかわいそうだから。他の人にはまかせられないし」と言われることが多いですね。それがその時代の夫婦像だったのか。今の時代に生まれ変わって、お二人で生き直したら、どうなっていただろうかと夢想したりします。きっと、よりすてきなパートナーシップを築いていたんだろうなあと思います。
 さて、岡村さんはまもなく来日され、各地でライブ上映会を行います。夏らしく、合宿あり、オールナイトあり、レアな岡村淳研究もあり。かなりバラエティに富んだ企画満載です。ぜひ、「上映会実施のお知らせ」をチェックして、ご都合の合う企画に参加して、岡村ワールドを堪能してください。
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by hoshinotjp | 2009-08-04 23:58 | 映画