2009年2月24日(火)

 アカデミー外国語賞を獲った『おくりびと』、私も関心のある作品だから、受賞は喜ばしいことだと思う。しばらくは映画館も混みそうなので、見るのはもう少し先になりそうだけど。
 ただ、NHKのニュース番組で、アナウンサーがノーベル賞と並べたり、「日本映画が世界に認められました」とはしゃいでいるのは、知性を欠きすぎじゃないかと違和感を持った。アカデミー賞とノーベル賞を並べてしまうメンタリティは、WBCやらワールドカップやら、とにかくスカッとする祭りを求める今の世の傾向をそのまま表している。ニュースキャスターが世論と同じ地平で同じ方向を向いて報道をしてよいのだろうか?
 また、アカデミー賞はアメリカ映画業界の内輪の賞であり、「世界に認められました」は間違いである。ただ映画産業はハリウッドが圧倒的に巨大だからアカデミー賞が大きく見えるだけで、ベネチアやらカンヌやら東京やらの国際映画祭とは意味がまったく違う。「アメリカ=世界」と思い込んでいるような、あまりにベタで悲しい認識ではないか。さらに言えば、日本の映画はずっと昔から世界に認められている。あくまでも、世界のマーケティングに与える効果が大きいハリウッドで賞を獲ったことが快挙なのだと認識した上で、喜ぶべきだろう。国営放送のニュース番組なのだから、プロパガンダに乗ったかのような浮かれ騒ぎはやめてほしいものだ。

追記・映画館へ殺到する様子を見ていると、またぞろ「納豆」や「バナナ」の繰り返しかとうんざりする。ニュース番組でのインタビューで登場したおばさんのコメントが、これらの条件反射的殺到のメカニズムをよく表していた。曰く、「見たくないと思っていた映画だけど、アカデミー賞獲ったって言うから、見とこうと思って」。「見とこう(見ておこう)」というのは、「見よう」という個人の意思ではなく、一種の義務感である。つまり、みんなが見るから自分も見ないと、漏らさずに押さえておかないと、という強迫観念を示している。見たくないなら見ない、で筋を通してほしい。自分個人の判断を大切にしてほしい。さもないと、永遠に「世論依存症」から抜け出せず、中毒は深まるばかりだろう。
 ついでに、原作本まで爆発的な売り上げで、これまでの15万部からわずか2日で30万部へと増刷されたそうだ。反射的に一斉に同じ行動を取るこの光景は、やはり異常だ。この社会はまったく自覚のないまま、重度の強迫神経症に冒されている。
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by hoshinotjp | 2009-02-24 23:10 | 映画